部門から全社へ 海外拠点をも巻き込む 人の活動価値向上へ向けたヤンマー建機の挑戦 ~ 人とデータと業務をつなぐdejiren ~ 生成AIの活用もチャレンジ中

ヤンマー建機株式会社

  • 業種

    製造業

  • 事業規模

    1,615名(連結)

  • 課題

    製造/営業現場からのデータ収集とデータの利活用

2023/10/31(火)~2023/11/2(木)の3日間、国内最大級のビジネスカンファレンス「updataNOW23」が開催された。会場では、DX・データ活用を軸にした約70のセッションと、30社による最新ソリューション・サービスの展示を実施。今回は、当日開催されたセッションの中からヤンマー建機株式会社の「dejirenの活用事例」について紹介する。

本セッションのメインスピーカーは、ヤンマー建機株式会社のDX推進に取り組む田中重信氏。dejirenの製品紹介など、一部の解説はウイングアーク1st株式会社 dejiren事業開発部の大畠幸男が担当した。

スピーカー

ヤンマー建機株式会社
戦略部 DX推進グループ 兼品質保証部品質企画グループ 課長
田中 重信 氏
前職でMotionBoardと出会い、2020年ヤンマー建機へ入社。
社内では部門間データ連携のハブの役割を担うだけでなくヤンマーグループの他事業と連携し「データ活用推進者」として活動。現在はDX推進部門を主に担当しデータ活用を更に加速させるべく奮闘中。
nest九州・沖縄、製造業データ活用ワーキンググループリーダー。Data Driven Meister 2022を受賞。
ウイングアーク1st株式会社
dejiren事業開発部 部長
大畠 幸男
2007年、ウイングアーク1stの前身に入社。BI製品のプリセールスマネージャーを経て、BI事業全体の技術担当として開発部門との製品戦略に従事。その後、IoTを中心としたビジネス連携や実証実験、IoTベンダーとの協業アライアンスを推進。現在は、同社新規事業における製品企画・開発に取り組む傍ら、エバンジェリストとしての活動も行っている。

会社概要

ヤンマー建機株式会社
ヤンマーグループの中で小型建設機械(油圧ショベル・ローダーなど)ならびに汎用製品(発電機・ 投光機など)の開発・生産・サービス・販売。

ヤンマー建機のDX推進の歩みとツールの使い分けのポイント

まずは、ヤンマー建機のDX推進の歩みとツールの使い分けのポイントについて、DX推進を担当した田中氏が解説した。

ヤンマー建機DX推進の歩み

ヤンマー建機のDXがスタートしたのは、2020年。当時、田中氏が配属された品質保証部内では資料の作成・管理に紙とExcelが使われており、データ活用には課題がある状態だったという。そこで、まずはBIツールによる資料の作成・管理に着手。最初は他社BIツールによるデータ化に取り組み、2020年の冬頃にMotionBoard Cloudを最小ライセンスで導入。月次・週次・日時の資料をMotionBoard化し、品質保証部内のデータ化に成功した。

2021年になると、品質保証部内のデータ化に興味を示した他部署から「MotionBoardを使いたい」という声が聞こえるようになったという。全社でDXの機運が高まっているのを感じ、田中氏は各部署とのデータ連携やMotionBoardの導入をサポート。それと同時に、DX推進に社員を巻き込む活動にも着手した。

「DXに前向きな方々がどんどんと増えていき、2022年にはDX推進グループが発足。各部門のいろいろなデータを結合して、みんなで一緒に使えるようにしようといった全社での取り組みにまで進歩しました」(田中氏)

2023年はさらにDXを推進するべく社内コミュニティを発足。「全社員がデータ活用者になる」という目標を立て、DXのすそ野をさらに広げる活動を推進している。

データ化におけるツールの使い分けのポイント

取り組みのはじまりから現在まで、田中氏が導入したツールは「MotionBoard・Dr.Sum・invoiceAgent・UiPath・dejiren・AgileWorks・SmallDataManager・KEEN Manager」など多岐にわたる。田中氏によると、「複数のツールを使い分け、データ化・DX化を進めたのがDX推進の肝だった。」という。

同社のツールの使い分けのポイントは、社内のすべての情報をDr.Sumに集約させているという点。「個人のExcel・会社のシステム・営業データ」など、あらゆるデータをDr.Sumに集約し、データの事前集計をITベンダー・情報システム部門に委託。データを使いやすい形に加工してもらったうえで、社員がMotionBoardで自由に可視化できる環境を構築した。このような同社のデータ活用ソリューションは、Dr.SumとMotionBoardによるデータ集約と可視化を核として、以下の3つのカテゴリで構成されている。

1.データをつなぐ
「個人のExcel・工場のIOTデータ・社内システム・データファイルサーバ」といった社内のあらゆるデータをsmallDataManagerとDr.Sum connectに結合。この2つに結合できないデータは、自動実行ツールUiPath OrchestratorとWebから情報を取得しDr.Sum に集約するUiPath StudioXで補完した。また、多種多様なシステムと連携でき、データの取得とDr.Sum への集約ができるdejirenも活用している。
2.データを入力する
各社員が行うデータの入力作業は、MB Date-Jig・i-Reporter・dejirenの3つのツールで統一。
3.業務効率化
業務効率化のためのデータ取得を行い、Dr.Sumに集約。invoiceAgentとAgileWorks」を使い、UiPath・CSVに連携している。また、ワークフロー的な業務ツールとしてdejirenも活用している。

各ツールを使い分けて全社のデータを集め、業務効率化を実現しているのが同社のデータ活用ソリューションの全体像。また、田中氏によるとツールの使い方や管理方法をDX推進グループで統括しているのもポイントだという。

「私たちのように、複数のツールで膨大なデータを集め・活用するとき、ツールを管理する部門がバラバラだと混乱が生じてしまいます。そのため、全体をまとめる統括本部のような機能が欠かせません。そういった意味で、DX推進グループを発足したことには大きな意味があります」(田中氏)

ツールの導入で失敗しないためのポイント


2020年から現在までの3年間、社内のデータ活用を実現すると同時に、数々の失敗も経験したと田中氏。中でも、特に学びが大きかったポイントとして、ベンダーとの関わり方をあげる。

「何よりも痛感したのは、データ化やDX化に必要なツールやその組み合わせは会社によって違うということです。そのため、ITベンダーやSIerからの提案を鵜吞みにしてしまうと、導入しても失敗してしまう可能性が高くなります。このような失敗を防ぐためには、提案を受けるのではなく、こちらから提案をすることが何よりも大切です。導入するツールで何がしたいのか?そのためには何が必要なのか?といった要素を把握し、ITベンダーやSIerにこちらから提案することが成功への近道といえます」(田中氏)

また、有益なツールや情報が身近にあっても、その良さに気づけず、見過ごしてしまっているケースが多々あると田中氏。DXやデータ活用の成功には、プロジェクトを推進する人・部署が、常に最新のヒト・モノ・コトに触れられているかどうかも重要だという。

MotionBoardを取り巻くデータ入力の使い分け

同社は、「i-Reporter・MB Data-Jig・MotionBoardの入力機能・dejiren」の4つのツールを使い分けてMotionBoardにデータを入力している。ただ、最初は「どの入力方法が何に適しているのかわからず苦労した」と田中氏。すべての入力方法を試した結果、現時点では以下のように使い分けに落ち着いている。

また、それぞれのツールの機能を比較したのが以下の表。

ツールごとに得意不得意があり、用途に合わせて使い分けることが重要と田中氏。ただ、4つのツールの中でも特に用途が多く、利便性が高いと感じるのがdejirenだという。

「4つの入力方法の中でも、得意分野が多いと感じるのはdejirenです。高度な入力フロー作成に対応しており、情報取得やDr.Sumと連携できるのが特徴。また、複数人で同時に入力しても正確にデータベースに反映される「多重入力」に対応しているのもポイントといえるでしょう。」(田中氏)

dejirenとは何か?


次に、同社のDXに欠かせないツール「dejiren 」について、ウイングアーク1st株式会社の大畠が解説した。

dejirenは、ヒトを中心としたクラウドサービスで、ヒトとヒト、ヒトとデータ、データとデータをつなぐプラットフォーム。「ヒト・データ・業務」の情報分断、及びそれが原因で発生するアナログ業務を無くすための機能を多数搭載しており、各企業の業務効率化を強力にバックアップしている。

ではdejirenでは具体的にどのようなことができるのか?大畠によると、「dejirenでできること」として以下の3つがあげられるとのこと。

1.no-codeによる業務フロー作成
複数のサービスを横断した複雑な業務フローをno-codeで作成でき、自動化・効率化する。
2.各種きっかけからVAを呼び出す
「フローを動かす時間になったら」「ドキュメントが更新されたら」など、さまざまなきっかけから自動でVAを呼び出し、業務をサポートする。
3.VAが業務フローを自動処理&データ収集
VAが業務フローを自動処理&データ収集。蓄積したデータをDr.SumやMotionBoardにつなげ、データ活用をサポートする。

「これら3つを実施するために、他社チャットと連携するビジネスチャット・コネクタ・VA作業手順書・フォーム&データベースといった4つの基本機能を搭載しています。これらの機能を活かして、業務フローを見直したり、作業を自動化したり、ツールとツールをつなぐハブとして使っていただいたり、さまざまな企業のDX化・業務効率化に活かしていただけます」(大畠)

ヤンマー建機でのdejiren活用事例の紹介

では、ヤンマー建機では具体的にどのようにdejirenを活用し、DX・データ活用に活かしたのだろうか?3つの活用事例について、田中氏が解説した。

事例1:生産現場での前工程への情報フィード バックの迅速化


生産現場では、機械の塗装工程をチェックして、翌朝に品質管理や前工程の担当者に知らせる業務があるという。以前は「紙に記入して班長がExcelでパソコンに集約する」といった方法で行われていたが、業務効率化のためにdejirenを導入。「dejirenのフォームに記入し、即座にMotionBoardに反映させる」という方法に変更したことで、紙で記入してExcelにまとめる業務が削減された他、品質管理・前工程の担当者へのフィードバックが格段にスピードアップした。

「これまでは工程に不具合が発生していても翌朝になるまでわからない状態だったのですが、dejirenを導入したことで即座に状態を把握し対処できる体制に。導入後は、『毎日の紙・Excelへの記入がなくなって、注力業務に集中できるようになった』『不具合への対処も早くなり、品質が向上した』など、現場からも喜びの声が届いています」(田中氏)

事例2:市場品質問合せのスピードアップ~品質情報の即時分析/即時フィードバック


機械の修理の問い合わせがあった場合、まずはスタッフが訪問して故障個所や原因を調査する。その後、調査内容をパソコンに登録し、保証内なのか保証外なのかなどを確認してからようやく修理業務がスタートする。このワークフローで問題になっていたのが、情報入力できるのが会社のパソコンだけだったという点。調査から情報の登録までにタイムラグが生じ、サービスの提供までに時間がかかっていた。

そこで、品質情報の登録フォームをdejirenで作成し、Dr.Sum経由で社内システムと連携。モバイルからも入力・送信ができるようになったことで、品質情報の即時判断・即時フィードバックが可能になった。

「修理サービスをすぐに提供できないことは以前から課題になっており、スピードアップのための施策が必要不可欠な状況でした。dejirenを導入したことで、パソコン以外からも入力ができるようになり、課題になっていた入力までのタイムラグが解消。また、UiPathを組み合わせることで、テキスト・数値の入力だけでなく画像も登録できるようになり、情報の精度も向上しました」(田中氏)

事例3:(取組み中)場内在庫機数の把握


ヤンマー建機で扱っている建築機械はサイズが大きく、工場内に置ける台数に限りがある。定期的に運送業者と連絡を取り、倉庫や港への輸送を依頼しているが、在庫数と引取のタイミングがずれるなど、在庫管理の難しさが課題に。このような課題解決のため、工場内にある在庫台数をMotionBoardで表示し、dejirenを通して運送業者のスマートフォンに自動で知らせるシステムを現在構築中。すでにテストは完了しており、一定の効果を確認済みだ。

「これまでは、社内システムに入ったり、工場と連絡を取り合ったりして在庫台数を把握していましたが、dejirenを導入することで、即座に台数を把握できるようになりました。まだ実装前の段階ですが、近いうちに稼働できる状態まで進んでいます」(田中氏)

dejiren生成AIとヤンマー建機の活用に向けての挑戦


ヤンマー建機ではdejirenの導入によって、さまざまな業務効率化が実現した。今後もさまざまな取り組みを進める予定となっており、中でも注力しているのがdejirenと生成AIを組み合わせたソリューションだという。では、「dejiren×生成AI」によって、どのようなことが可能になるのか?ウイングアーク1st株式会社の大畠が解説した。

「私たちは『dejiren×生成AIで企業全体の業務に組み込める世界を作る』というコンセプトのもと、『dejiren×音声×生成AI』『dejiren×フリーテキスト×生成AI』など、実用性の高い生成AIの開発に取り組んでいます。このプロジェクトの具体的なコンセプトとしては、以下の3つがあります」(大畠)

1.ナレッジデータベースとしての進化
(※生成AIが生むデータのナレッジ化)
2.生成AIの難しさを簡単にしたい
(※処理フローテンプレート提供 ※長時間音声や長文の取り扱い)
3.ワンストップサービスの提供
(※インクルードプラン ※各社LLM「大規模言語モデル」への連携)

これらの方針を実現するためのプロジェクトとして、現在、ウイングアーク1st株式会社はヤンマー建機と共同で以下のようなdejiren×生成AIのソリューションを開発中だという。

Chat-GPT連携が現場で嬉しい! 市場品質問合せでの活用


顧客からの修理依頼があった際、スタッフが現場に訪問して、故障や不具合の原因を調査する。その後、調査結果を社内システムに送信するフローが発生するが、手袋や油汚れによってタブレットを操作できないといった課題が発生していた。そこで、dejirenと生成AIのひとつであるChatGPTを連携させた音声自動入力システムを考案。調査結果の入力業務を効率化する検討を行っている。

「手が使えないシーンでも、声を使ってタブレットに情報を入力できる仕組みを検討中です。デモ版ではあるものの、すでに現場での実証実験も行っています。実際に活用したスタッフからは『項目ごとに内容を細かく分類して入力してくれる』『短い文章であれば、再編集がいらないくらいの文章を入力できる』といった喜びの声も届いています。まだまだ、精度や安定性に不安がありますが、このペースで進めば、近い将来に現場で実装をできる状態まで進められると感じています」(田中氏)

dejirenへの期待と更なる活用に向けてのお願い

dejirenは、「データをつなぐ・データを入力する・業務効率化」といった、データ活用ソリューションすべての構成要素であり、現在進行中の生成AIの活用など、ヤンマー建機のDX推進に欠かせないツールとなっている。ただ、さらなるDX化の推進のためには、一部改良が必要な部分もあると田中氏。セッションの最後には、今後のdejirenへの期待が田中氏から大畠に向けて語られた。

「現時点でとても満足しているのですが、さまざまなシステムと連携し今よりもVAを作りやすくするために、『コネクターの大量追加・生成AIでシナリオを作れるようにする・MotionBoardのようなVAサンプルギャラリーを作る』といった改良をいただければと考えています。また、dejirenをもっと有効活用するために、今後は「dejiren構築パートナーの拡大・ハンズオンセミナーの実施」などに取り組んでいただけるとうれしいですね。今後、どのような機能が追加されて、どのような効果が得られるのか、dejirenのさらなる進化に期待しています」(田中氏)

FREE TRIAL

無料でトライアルを開始する

×

お問い合わせ

資料請求

無料トライアル

CONTACT

お問い合わせ

REQUEST DOCUMENTS

資料請求

FREE TRIAL

無料トライアル